『 王女さまが ・・・ いいの? ― (2) ― 』
「「 知らないお姉さん がいるよ〜〜 」」
「 ・・・ え〜〜〜 も 燃える恋はぁ〜〜〜 」
狭いバック・シートの中で三種類の声が 飛び交った。
「「「 うっそォ 〜〜〜〜〜 」」」
「 ・・・ は。 うっそ〜 は こっちのセリフだよなあ。 」
「 ええ ・・・ そうみたい ね。 」
「 やれやれ だなあ ・・・ どうしてぼく達って ・・・ 」
「 ホント。 いろいろ・・・拾っちゃうのかしらねえ 」
わいわい騒いでいる色違いのアタマの後ろでは 大きな色違いのアタマが嘆息していた。
「 ・・・ ともかく。 あのお嬢さんをどうにかしなくちゃ ジョー? 」
「 ウン。 とりあえず・・・ < まいご > 届けを出さないとね。 」
「 そうね。 」
ジョーは こっそりもう一つ溜息を漏らすと 子供達を押しのけて。
「 こら ・・・ ちょっと退いてくれよ。 」
「 あ〜〜 ねえねえねえ〜〜 お父さん! 知らないお姉さんだよ?
ねえねえ おとうさん〜〜 コレ ・・・ いつ 買ったの?? 」
「 おとうさん おとうさん 〜〜 ねえねえ〜〜 このお姉さん、ウチの?
ねえねえ ・・・ 僕のへやでいっしょにあそんでもいい? 」
すばるもすぴかも 声のトーンが2つくらい素っ飛びあがっている。
「 こらこら。 このヒトは ・・・ ちょっとね お父さんがお話してみるから。
外でお母さんと待っていなさい。 」
「「 え〜〜〜〜〜 」」
「 さ・・・ 二人とも。 お買い物の袋を持って降りてきて?
それでね〜 ナマモノ ・・・わかるかな、お野菜やお肉・お魚のこと。
それ以外を 後ろのトランクに入れてくれるかな。 」
「 ・・・ う〜ん ・・・・でも さ。 あのおねえさん さ〜 」
「 おねえさん さ〜〜 」
「 それはお父さんにお任せすればいいのよ。
あなた達は < たんとう > の袋を持ってこっちにいらっしゃい。 」
「「 ・・・・ はあい ・・・ 」」
いつだって絶対者の フランソワーズ の声にチビ達が逆らえるはずなどなく・・・
ちらちら ・・・と < しらないお姉さん > の方を見つつも ちゃんとレジ袋をぶら下げて
母と一緒にトランクの前に立った。
「「 ねえねえねえ〜〜〜 おかあさん〜〜〜 」」
「 ・・・ はい、 これと これ ね。 ありがとう。 こっちはね、トイレット・ペーパーと
テイッシュ・ボックスなの。 上手に入れて頂戴。 できるかな? 」
「 できるもん! すばる〜〜〜 ティッシュの箱、 もってきて! 」
「 う うん ・・・ えい! えい! ・・・ の のせたよ〜 すぴか ・・・ 」
「 ・・よっしょ ・・・ ! おか〜さん、 これでいい? 」
「 まあ〜〜 上手に出来たわね〜 ありがとう! 」
フランソワーズは 屈みこんで二つの得意顔を抱き寄せキスをした。
「「 えっへっへ〜〜〜 」」
「 さ ・・・ こっち、いらっしゃい。 」
「「 ・・・ うん ・・・ 」」
子供たちは 再びチラチラ・・・ 車の中を見ているが なんとか母の言いつけに従った。
「 ・・・・ ・・・・?? 」
「 ・・・・ ・・・・ ・・・・・・・ 」
車の中に半身つっこんで ジョーは <知らないおねえさん> としきりに話をしている。
< 知らないおねえさん> は かなりカッコつけて座っている。
時々 長い髪をふぁさ〜〜とかきあげ上目遣いに じ・・・っとジョーを見つめている。
・・・ あらあ〜〜 ・・・ なんか・・・あまり < 上手 >じゃないわねえ・・・
もうちょっと自然にやらないと ・・・
・・・ いっくら 朴念仁 のウチのジョーでも 気がついてしまうわよ?
え〜と ・・・ どこの オヒメサマ なのかなあ?
フランソワーズも こっそり溜息を漏らすと 両手に興味深々なちっちゃな手をにぎって
夫の側に寄っていった。
「 ― ジョー? ≪ ・・・・ どちらのお客さま? ≫
「 あ ・・・フラン ・・・ ≪ ウン ・・・ なんかすげ〜不自然だよねえ? ≫
「 どうなさったのかしら、 その方 ・・・ ≪ どうするの。 警察? ≫
「 それがねえ ・・・ よくわからなくて ≪ ま・・・一応は届けておかないと ・・・ ≫
「 そう・・・ じゃ ・・・ アナタにお任せしますわ。
わたし、 子供達と先にバスでウチに帰っていますから。 」
「 そうかい ・・・ そうしてくれるかな。 あ ・・・ 買い物の荷物は車に乗せてくれ。 」
「 まあ お願いしますね。 」
「 うん。 さあ お嬢さん、迷子さん ですからね、警察に届けないと 」
「 けいさつ? まあ〜〜〜 そ そんな ・・・ オソロシイ ・・・ 」
バック・シートにへばりついている お姉さん は 怯えた顔をして半分泣くフリをしていた。
「 お家の方が心配していますよ。 一緒に行きますから。 ( ・・・ やれやれ・・・ ) 」
「 ジョー? それじゃ、先に帰ってますわ。 ≪ 大変ねえ・・・ 気をつけて・・ ≫
「 きみも な。 ≪ ああ。 いくらぼくでも ・・・ ブリっこっていうんだっけ? ≫
「 ・・・ あのう ・・・ 私。 ああ 眩暈が・・・ 」
「 ね! アタシが一緒にいったげる、お姉さん。 アタシ、ほけんいいん だから。 」
お父さんの脇の下から ずい・・・っと ちっちゃな金色のアタマが割り込んできた。
「 あ・・・ すぴか・・・ 」
「 さ。 お父さん、行こ。
すばる、 アンタ 荷物もってお母さん、つれてかえって。 できるよね? 」
「 う ・・・ うん ・・・ 」
「 いい? わかった?! 」
「 ・・・ うん。 」
「 じゃね〜〜 さ おとうさん、行こ。 こうばんだよね? 」
「 あ ああ ・・ ( すげ〜〜 すぴかのヤツ・・・フランそっくりじゃん ・・・) 」
「 ま まあ ・・・ それじゃ ・・・ すぴかさんにお願いしましょう。 ね ジョー? 」
「 そうだな。 じゃあ すばる! お母さんを頼んだよ、 いいね。 」
「 は はい!! 」
父親譲りのクセっ毛を揺らして すばるは緊張の面持ちだ。
それでも 母親の手をぎゅっと掴み、 こっくん・・・と大きく頷いた。
「 よ〜〜し。 じゃ・・・ お嬢さん? ウチの娘もご一緒するそうですから・・・
女性同士で話も合うかな〜 とりあえず、大通りの交番まで行きましょう。 」
「 ・・・え ・・・ ええ ・・・ 」
「 おねえさん? ほら・・・! よ〜いしょ・・・っ! 」
すぴかは 女性の手を掴むとぐい・・・と引っ張った。
「 ・・・あ ! ああ ・・・ ちょ ちょっとまって・・・ 」
もう〜〜〜 なんだって こんなコトになるわけぇ〜〜〜???
は。 すぴかが一緒なら 妙〜な眼つき、しないだろ。 やれやれ・・・
コブつきオトコに 色目使う女子もいないでしょ ・・・ やれやれ。
すぴか! そのおねえさん もってかえってきて!
わかってる! すばる!
― どうやらロマンチック・・・とは程遠い展開になってしまった。
30分後 ―
ガー −−−−− ・・・・!!!
きゃあ〜〜〜♪
うわ〜〜い、行くよォ〜〜〜 ほらっ!
うわ〜〜 うわ〜〜 すごい♪
ぼ 僕も 〜〜〜 えいっ!!!
あ すごい〜〜 きゃあ♪♪
ガー −−−− ・・・・ !!!! ゴー ・・・・・!!
「 ― ふう〜〜〜 ・・・・ 」
大通のはずれにある公園のベンチで ― ジョーは特大の溜息をついていた。
目の前では 子供が二人と 大供? が一人 きゃ〜きゃ〜スケボーに興じている。
この公園は 高速道路の陰いうちょっとばかり位置が悪く、日頃から人気がない。
大通りがパレードやら御祭りで賑わう日には まったく閑散としていた のだが。
今日は 日頃ちっとも出番のない備え付けのスケボーがさっきから大活躍だ。
「 ふう 〜〜〜 」 またまた溜息が空中に消えていった。
・・・ なんだってこんなトコで ぼ〜〜っとしてなくちゃいけないんだよ・・!
「 ジョーォ? 」
不意に後ろから声がきこえた。
「 ! あ フラン〜〜 早かったね! 」
「 え〜え・・・ もう 加速装置フル稼働〜〜 に近いスピードでぶっ飛ばしたわよ。 」
「 え・・・ だ 大丈夫だった? 」
「 平気よ。 ほら 御祭りでこっちの方に関心が集まっているでしょ?
あ〜〜んなローカルな一本道 ・・・ 通る車なんかほとんどないんですもん。
・・・ 取り締まりなんか あるわけないでしょ。 ー ちゃんと <見た> し。 」
( 注 : よいこ はまねをしてはイケマセン。 )
「 ともかく ウチまで戻って博士に事情をお話して。 生鮮食料品を冷蔵庫に放り込んで・・・
とんぼ返りしてきたわけ。 」
「 ・・・ すげ ・・・ 」
「 それで? 警察はどうしたの? あの ・・・ ヒト?? 」
フランソワーズはジョーの隣にすわって じ〜〜っと視線を件の彼女に向けた。
「 ウン それが さ。 」
すこし時間は遡る ― ジョーは大小のオンナノコと一緒に大通りにある交番にいた。
「 ・・・え・・? そ そんな ・・・ 」
「 だから〜〜 お願いしますよ〜〜 なに、ギルモアさんの御宅なら大安心。
ウチの署長だって太鼓判ですから。 」
「 ・・・ はあ ・・・ 」
「 もうね〜〜 迷子だの案内だのでてんてこ舞いで ・・・ あ! すいません、ちょっと〜
ああ? なんだ・・・うん うん ・・・ それじゃ駅前派出所から応援をたのめ。
・・・ もう連絡した? で 断られた? ・・・ う〜〜〜〜 そんじゃ ・・・ 」
<知らないお姉さん> と一緒に訪ねた交番は 大賑わいの大騒ぎの真っ最中だった。
数人いるお巡りさんたちは てんでに迷子 だの ガイジンさんの道案内 だの。
落し物届け だの スリの被害者への対応だの にてんてこ舞い ・・・
そこに ジョー達がやってきてしまった。
なにせ この外見である。 ガイジンの親子がやってきたかあ〜・・・って雰囲気だ。
「 ― はろ〜? めいあいへるぷ ゆ〜 ? 」
年配のお巡りさんが ちょいとぎこちな〜い笑顔で話しかけてきた。
「 あ。 すいません〜 あのう〜〜 迷子なんですが。 」
「 ・・・あ。 ああ はいはい・・・ 」
あ 日本語だぁ よかった〜〜〜・・・って お巡りさんはいっぺんに晴れ晴れ笑顔〜〜になった ― のだが。
「 ん? あれ・・・ もしかしたら。 F市の海沿いの・・・岬の洋館の若ダンナさんでしょう? 」
「 は? え ええそうですが・・・ 」
「 あ〜 覚えていませんか? ご隠居さんの囲碁仲間の ・・・ 佐藤ですよ。 」
「 ・・・ あ! ああ〜〜そうでしたね! 一度ウチにいらっしゃいましたよね〜 」
「 はい その節はど〜も。 で ・・・ 迷子って。 お嬢ちゃんはここにいますよね? 」
「 こんにちは〜〜 お巡りさん。 まいご はねえ、 このおねえさん。 」
すぴかが ずず・・・っと件の彼女の手をひっぱった。
「 ・・・ こちらは? あの美人の奥さん ・・・ じゃないですよねえ? 」
「 はは・・・ ええ。 あの〜 あ〜 ・・・ちょっとぼくの車のところで 見つけてしまって。 」
「 ほう? あ〜 お嬢さん、どちらからいらしたのですか? 」
「 ・・・ ワタシ。 ヨクワカリマセン ・・・ 」
<お嬢さん> は うるうる・・・ 大きな緑の瞳に涙をいっぱいしてお巡りさんを見上げた。
「「 うっそ つけェ〜〜〜〜 」」
ジョーとすぴかは同時に思ったけれど ― さ〜すが <仲良し親子>、
ちら・・・っと横目使いあっただけで 二人ともそれ以上な〜んにも言わなかった。
「 う〜〜〜ん・・・? 困ったなあ ・・・ 」
「 部長! すいません、本署から電話が〜〜 」
わんわん泣いてる坊やの相手をしていた別のお巡りさんが 奥から叫んでいる。
「 おう! 今ゆく、ちょいと待て。 すいません〜〜 若旦那さん、お願いできませんかね。 」
「 ・・・ は? 」
「 ご覧の通り、もうウチはてんてこ舞いなんですわ。 も〜 満員御礼ってわけで。
そのお嬢さんですが〜 今日は御宅で預かってくれませんかね? 」
「 ― ・・・ はぁ ??? 」
「 いやあ〜 そうですか、それはありがたい〜〜〜
なに、 ギルモアさんの御宅ならウチとしても全幅の信頼をお寄せしてますからね〜〜
大安心ですよ〜〜 このお嬢さんも安心でしょう。
なに、後のフォローはこちらでしっかりやりますので。 それじゃどうぞお願いしいます。
あ! 美人の奥サンと坊やとギルモアのご隠居さんにもヨロシク〜〜 じゃ! 」
イッキに捲くし立て ― ぴ!っと敬礼するとそそくさ〜〜と奥に入り電話に出てしまった。
「 あ〜〜 ・・・・ えっとォ〜〜〜 」
「 ・・・ おとうさん ・・・ 行こ ・・・ 」
すぴかがぼそ・・っと言って、ぼ〜〜っとしてるジョーとにこにこ顔の < おねえさん > を
引っ張って歩き出した。
「 あの♪ ミスタ・ギルモア とおっしゃるのですか? どうぞよろしく〜〜 」
たった今まで不安の涙でおろおろしていた ― ふうに見えていた若い女性は。
もう大にっこにこ〜〜で ジョーの側に ぴた! っと張り付いている。
「 あ・・・ え〜とォ〜〜 」
「 あのね、 おねえさん。 ウチは し ・ ま ・ む ・ ら。
ぎるもあ は おじいちゃまのお名前なの。 わかった? 」
二人の間に ずい〜〜〜っと金髪のちっこいアタマが出現し、重々しく宣言した。
「 あ・・・ う うん ・・・まあ そんなトコなんだけど ・・・ 」
「 あ あら そうなのですか。 どうぞよろしく、ミスタ・シマムラ。 そしてお嬢ちゃん。 」
「 ・・・ は あ まあ ・・・ ヨロシク ・・・ 」
ジョーはものすご〜〜〜く・びみょう〜〜〜な顔で指の先っぽだけで握手した。
「 すぴか。 すぴか よ、アタシ。 おねえさんは? 」
「 あら ごめんなさい。 すぴかちゃん。 私? 私は ― キャシー。 」
「 キャシー? ふうん ・・・ ま いっか、よろしく〜〜〜
これは アタシのおとうさん。 そんでもってあとおかあさんとすばる がいるよ。 」
「 おと〜〜〜さん〜〜 すぴか〜〜〜 」
「 あれ??? すばる??? どうしたんだ? 」
茶色のクセッ毛が とっとこ・・・一本道を走ってきた。
「 あの あのね ・・・ はぁ はぁ はぁ ・・・ お かあさん が ね 」
「 うん? 」
≪ ジョー? きこえる? ≫
「 え!? あ ・・・ ≪ ・・・ああ 感度良好・・・ってかびっくりしたあ〜 ≫
≪ あのね、 すばるが今 ・・・ そっちに走っていったでしょう? ≫
≪ うん。 今 到着。 ≫
≪ わたし、今から家に帰って荷物置いて。 すぐにまた戻りますから。
子供たちと < おきゃくさん > をしばらくお願い。 ≫
≪ え ・・・ あの〜〜 ≫
≪ 交番での会話 ・・・ぜ〜〜んぶ聞きました。 ・・・ 確信犯 じゃない? ≫
≪ ・・・ きみもそう思う? ≫
≪ ぴんぽん。 仕方ないわ、しばらくは彼女の出方を見ましょうよ。 ≫
≪ ・・・だな。 別に危害を加える・・とかが目的じゃなさそうだし ・・・ ≫
≪ ええ。 じゃ ・・・ 子供たち、よろしく。 ≫
≪ らじゃ。 きみも気をつけて〜〜 ≫
≪ ・・・ はいはい ≫
脳波通信を切ると フランソワーズはぐい・・っと車のアクセルを踏み込んだ。
・・・ まぁったく ・・・! 相変わらずの 朴念仁 ねえ ・・・
誰がターゲットなのか 全然判ってないんだから・・・
ま すぴかとすばるをくっつけとけば 最大の防御になるでしょ。
さあ 戦闘開始だわ! と 003はぶっちぎり〜〜〜なスピードで閑散とした裏道を
ぶっとばしていった。
「 おとうさん! おとうさんってば! だからね あのね あのね おかあさんがね。
僕にね〜 おとうさんとすぴかのお手伝いしなさいって。
おあかさん、おおいそぎでお家にかえって また ばった してくるって! 」
すばるは真っ赤な顔で懸命に話かける。 はあはあ言っているので半分くらいしかわからない。
「 え?? ばった? バッタがどうかしたのかい。 」
「 〜〜 だーから〜〜 ばった でとんでくるって! 」
「 ??? 飛ぶのかい? おかあさんが? 」
「 うん。 バッタみたく ぴょ〜〜んってとんで ぴょ〜〜んってかえってくる って。 」
「 ・・・・ あ。 わかった! < とんぼがえり > だろ? 」
「 う? ・・・かも? でね でね! すぴかと〜 あのおねえさん をお世話しなさいって♪ 」
「 わかった。 じゃ すばる、いっしょにがんばろう! 」
「 ん、 すぴか。 まず〜〜 ごはん、あげないと〜 」
「 そだね。 ・・・ なに、食べるのかな。 」
「 う〜ん ・・・?? < おねえさんのえさ > ってどこでうってる? 」
「 う〜〜ん??? 」
「 おいおい 〜〜 何言ってるんだ、二人とも〜〜 」
ジョーは 大真面目で考えこんでしまった子供達にあわてて声をかけた。
「 このお姉さんは。 おウチのヒトがお迎えにくるまで一緒にいるだけだよ。 」
「「 え〜〜〜 そうなのォ〜〜〜 ? 」」
「 ・・・ あ あの ・・・ 私 ・・・ お邪魔ですよね。
ごめんなさい・・・ご迷惑をお掛けして・・・ 私さえ居なければ・・・ さようなら・・・ 」
想い入れた〜〜っぷりなうるうる瞳でじ〜〜〜っと見つめてよろよろ彼女は2〜3歩歩きし出した。
セリフ通りの本気なら ぱ・・・っと駆け出すところだろうに ・・・
やれやれ・・・ どこまで付き合わなくちゃいけないんだ〜〜
ジョーは内心 溜息の嵐、 子供達もヘンな表情だ。
「 あの。 失礼ですけど、お腹減ってませんか? 一緒に昼メシどうです 」
「 ま まあ ・・・ あの ・・・ ご迷惑じゃ・・・ 」
うるうる瞳が上目遣いに見つめている。 <さようなら> なんて気配はどこにもない。
「 ( ご迷惑だよ〜〜 ) い いえ ・・・ 」
「「 おとうさ〜〜ん アタシ・僕 も〜〜〜 おなかすいたぁ〜〜〜 」」
「 わかってるって。 じゃあ〜〜 ほら そこの まっく 行こ。 」
「 うん! あ でもダメだよ〜〜おとうさん。 おかあさんがさ、もどってくるもん。 」
「 あ そっか〜〜 ・・・ おし、それじゃ 買ってきてそこの公園で食べよう。
それならおかあさんの車もみえるし。 」
「「 わぁ〜〜〜〜い♪ 」」
「 ・・・え ・・・ まっく ・・・?
( ・・・ ちょっとォ〜〜〜 洒落たカフェ とか せめて海を眺めながらコーク とか。
いや〜〜ん いいシーンなのにぃ〜〜〜 ) 」
「 ほらほら。 お姉さんも一緒に連れていってあげなさい。 」
「 はあ〜〜い。 ほら こっちよ、 おねえさん。 」
「 ・・・・ おねえさん、 まっく しってる? おいしいんだよ〜〜 」
子供達は彼女 ― キャシー の手を引いて向かい側の店に歩いていった。
― で。 裏のあまり人気 ( ひとけ )のない公園で
オトナ二人と子供二人はテイク・アウトの ファースト・フードをパクつくことになった。
「 〜〜〜〜 ん 〜〜〜 お〜〜いしかったぁ♪ ごちそうさま〜 」
「 むぐむぐむぐむぐ 〜〜〜 ・・・ ( ごっくん ) ごちそ〜さま〜〜 」
すぴかもすばるも お口の回りをべたべたにしつつにぃ〜〜っと笑っている。
「 御馳走さま。 ・・・ 皆 お腹いっぱい食べたかな〜 ほら 口、拭いて ・・・ 」
ジョーは包み紙を回収すると、子供達に紙ナプキンを渡した。
「「 はあい ・・・ おとうさん 」」
「 キャシーさん、 お口に合いましたか。 」
「 ・・・え ええ ・・・・ 私 ・・胸が一杯で ・・・ 」
「 は あ ・・・ 」
「 貴方と一緒にお食事ができるなんて・・・嬉しくて 私〜〜 」
バーガーの包み紙を捻りつつ、彼女はまたうるうる・・・ジョーを見つめた。
「 ― おあねさん。 ごちそうさま は? 」
「 ・・・え? 」
「 ごはんがおわったら ごちそうさま しなくちゃいけないんだよ。
お家でもきゅうしょくの時も 皆で ごちそうさま するよ。 」
父親譲りのセピアの瞳が じ〜〜〜〜〜〜〜っと見上げている。
「 ・・・あ あら。 そうなの? ( そんな習慣、ないんですけど〜〜 ) 」
「 そうなの。 ごちそうさま してから遊びにゆくんだもん。 」
碧い瞳も一緒になって見つめている。
「 まあ ・・・ ( なによ〜〜 ) ご ごちそう さま。 」
「 ねえねえ〜〜〜このこうえん、 すけぼ〜 があるよ? おとうさん、やってもいい? 」
「 わあ〜〜い♪ 僕もすけぼ〜〜 すけぼ〜〜♪ 」
「 おいおい・・・ お前たち、 ちょっとは食休みしないで大丈夫か〜 」
「「 だいじょうぶ〜〜 おねえさんも やろ! 」」
「 え? あ? あ あ 〜〜 」
で もって。 三人はきゃわきゃわ大騒ぎでスケボーしている、というわけだ。
「 ・・・ そうなの〜 ふふふ ・・・ ご苦労様。 」
フランソワーズは苦笑しつつ ジョーの隣に座った。
「 ぼくはず〜っとここで眺めたいただけ。 仕切っていたのはすぴかとすばる さ。 」
「 まあ そう? 二人を置いていったのは正解のようね。 」
「 ?? なにが正解だって? 」
「 ・・・ いえ。 なんでもないわ。 ― で あのお嬢さん ・・・ キャシーさん、でしたっけ?
本気でウチにつれてゆくつもり? 」
ジョーは警察での遣り取りを脳波通信で実況放送していた。
「 ― だって 放っておけないじゃないか。 お巡りさんにも頼まれちゃったしさ・・・ 」
「 そう ねえ ・・・ じゃあ ・・・ ウチの車で連れて行く? 」
「 そうするしか ないかも。 ウチの住所は交番に届けておいたから 」
「 そう・・ じゃあ 本当に <お家のお迎え> が来るまで お預かり だわね。 」
「 ・・・ の ようだな。 はあ・・・ 」
「 ほら しっかりして? 」
「 ・・・ ごめんな。 きみとゆっくりヨコハマ散歩とかするつもりだったのに・・・ 」
「 いいのよ、 ジョー。 楽しみはまた別の日にとっておきましょう。 」
「 ・・・ありがとう フラン。 」
「 ・・・ んんん 〜〜 」
人通りのないのを幸いに、二人は白昼 屋外で! 堂々とかな〜り熱いキスをしていた。
! な なによ なによ なによ〜〜〜ォ〜〜〜
キャシー嬢は ちょうどばっちり目撃してしまい ― スケボーが止まった。
「 ・・・・・!!!! 」
― つん つん つん。 くい くい くい。
小さな手が二つ、彼女のブラウスの裾を引っ張る。
「 あのね おねえさん。 おとうさんとおかあさんの ちゅ〜〜 はいつも なの。 」
「 おねえさん、僕のおとうさんとおかあさんね、 あいしてる〜 ちゅ〜 なんだ。 」
「 ・・・ あ そ そうなの ・・・ 」
「「 うん♪♪ そうなの〜〜 ♪♪ 」」
色違いの瞳がにこにこ・・・見つめている。
この姉弟の両親は本当に仲が良いのだ、と納得せざるをえない。
・・・ なんか ・・・ あああ 私の 燃える恋 は・・・
「 ? おねえさん? どしたの? 」
「 ? ・・・あ! おうち、帰りたい? そうだよね〜 」
「 え ・・・ あ ううん ううん。 ごめんなさい。 」
キャシー嬢は 一生懸命に笑ってみせた。 子供たちに余計な心配はかけたくない。
「 それじゃ〜さ。 おねえさん、ウチにおいでよ〜〜 ね! すばる。 」
「 うん、すぴか。 わ〜い わ〜〜い おねえさん と ウチに帰る〜〜 」
「 あ ・・・ あの ・・・ ( ・・・ チャンスはまだ ある かも?? ) 」
スケボーで大騒ぎをし 髪はくしゃくしゃ、ブラウスも汗染みてしまった。
こ こんな恰好じゃ・・・ 寄り添ったり できないし〜〜
「 ねえねえ おとうさ〜ん おかあさ〜〜ん ウチに帰ろうよ〜〜う 」
すばるは困惑気味なおねえさんの手をぎっちり握ったままだ。
「 すばる ・・・ ほら、 おねえさんの手を離しなさい。
すぴか〜 スケボーは片付けてくれたかな〜 」
「 うん! ・・・ すばる〜〜 アンタの分もやっといたからね〜〜〜 」
「 ・・・ うへぇ あ ありがと〜〜 」
「 おうさすがに アネキ だな、すぴか。
さぁ・・・ それじゃ 帰るか〜。 あの お嬢さん? 本当にいいのですか? 」
「 はい? なにが ですか。 」
「 え〜と。 ですから その・・・・ウチになんかご案内しても 」
「 ・・・ ご一緒させてください ・・・ まあ!なんてステキなセピアの瞳・・・
うふ・・・ 情熱的な瞳をしていらっしゃいますのね♪ 」
おねえさん は胸の前で手を捩り合わせ < 今!気がつきました! > って顔で言った。
おとうさんの目って ず〜〜っと茶色じゃん?
じょうねつてきなひとみ って なに、すぴか。
・・・ かっこいい ってこと!
ふうん ・・・ あ! じゃあ 僕も じょうねつてきなひとみ なんだ〜♪
・・・ ふん!
すぴかとすばるは おねえさんの後ろでこっそり目でオハナシをしていた・・・
「 ・・・ は はあ・・・・ ( うわ ・・・ なんでそうすりよってくるんだ〜〜 ) 」
「 わあ〜〜い♪ おねえさん、ウチに来るんだ〜〜 うわぁ〜〜い♪ 」
さらに密着しよう・・・とした彼女の脇から セピアのアタマがちょこん、と割り込んだ。
「 うわ〜い♪ おねえさん〜〜 僕があんないしてあげるね〜〜
ね〜 ね〜 すぴか〜〜 おねえさん、ウチにくるって〜〜 」
「 すばる ・・・ ( あは・・・助かったよ〜 ) う うん ・・・ そうなんだ。
すぴかも ・・・ このおねえさんを車に案内してあげてくれ。 」
「「 は〜い おとうさん。 」」
「 ・・・ ジョー ・・・ 」
「 あ フラン。 あ〜 ・・・ キャシー嬢 ・・・家内のフランソワーズです。 」
ジョーはものすご〜く晴れやかな笑顔で細君を紹介した。
「 フランソワーズといいます。 どうぞ宜しく ・・・ ミス? 」
「 まあ。 初めまして。 キャシー・・・と呼んでください。 」
「 ミス・キャシー? それでは ・・・ごたごた散らかってますけど ・・・どうぞ。 」
「 ありがとうございます。 ミセス。 」
女性二人はにこやかに、異様ににこやかに挨拶を交わしていた。
― ひぇ 〜〜〜〜 ・・・ お〜 コワ ・・・
ゴットン ・・・! ドン ・・・!
田舎道を ジョーの車が滑らかに走ってゆく。 運転手の腕は最高なのだが・・・
なにせローカルな、海風にもさらされる道はぼっこぼこ・・・・ その間をぬって進むのだから
揺れの具合は並大抵じゃない。
「 わははは〜〜 ぼっこん〜〜♪ 」
「 きゃはは〜〜〜 ごろごろごろ〜〜ん♪ 」
子供たちには慣れた道、 がたがた具合を楽しんでいる。
〜〜〜〜 ん 〜〜〜 !!!
なんだって こんなコトになっちゃうわけェ〜〜〜
キャシー嬢は <ミスタ・イケメン> の隣、助手席で憮然としていた。
折角 折角〜〜 助手席に収まったのに。 ミスタ・イケメンとの距離はほんの数センチなのに。
ふわ・・・っと寄りかかり 寄り添うことはいとも簡単 ― なはずなのに。
彼女は 前を向いたきり ― 隣にしなだれかかることもなく身体を固くしていた。
― なぜならば ・・・
「 あのね あのね おねえさん。 そのかどにねえ 大きな松の木があるの〜 」
「 おねえさん あのね おのね〜 つぎのかど、まがると海がみえるんだ〜 」
後部座席からは 二組の色違いの瞳がじ〜〜〜〜〜っと彼女を見つめていて・・・
ず〜〜っと話しかけてくるのだ。
子供たちの母親は 真ん中でにこにこ・・・時々居眠りなんぞもしてリラックスしている。
う〜〜〜ん ・・・ もう ・・・!
せっかく〜〜〜 至近距離にいるのにぃ 〜〜〜
そう ・・・ 息遣いもわかるほど近くに座っているのだけれど。
彼女は ミスタ・イケメンのドライバーに しなだれかかることもこっそり手をにぎることも
― できなかったのだ。
もう〜〜〜〜 なんでェ こうなるのォ〜〜〜〜
キャシー嬢の心の叫びも一緒に乗せて ジョーの車は一路、岬に我が家へと疾走していった。
「 さあ〜 冷たいオヤツだよ〜 あれ ・・・ キャシーさん どうしました? 」
「 え ・・・ あら・・・ ミスタ・島村・・・ いえ なんでも ・・・ 」
ジョーは大きなトレイを捧げてリビングに入ってきて 足をとめた。
リビングの窓際に例の<お姉さん> が佇み じ〜〜っと遠くに視線を飛ばしているのだ。
あれ ・・・ 今度はナンなんだ〜〜
その立ち方がかな〜り思わせ振りっぽかったが、ジョーは一応声をかけた。
なんと言っても 大切なお客さんなのだから・・・
「 ・・・ いえ な なんでもありません わ。 」
大きな緑の瞳を またまたうるうるさせ、 待ってました! とばかりにジョーを見つめ・・・
そして ささ・・・っと視線をもとに戻した。
「 ( やれやれ ・・・ しょうがないなあ・・・ 相手、してやるか ・・ )
何かありましたか? この辺りの風景もなかなか面白いでしょう? 」
「 え ええ ・・・・ 」
「 こんなド田舎ですけど・・・ 自然だけはたっぷりあります、都会の方には面白いかも。 」
「 ・・・ 海が みたいわ ・・・ 」
「 今日は天気がいいから ― え? なんですか? 」
かなり低めのトーンでの発言、 ジョーは思わず聞き返した。
「 ・・・ ええ あの。 海 が ・・・ 見たい ・・・ 」
「 ― は あ ・・・? 」
バタン ・・・! リビングのドアが勢い良く開いた
「「 わ〜〜〜〜〜 おとうさん〜〜 オヤツぅ?? 」」
色違いのアタマが前後して駆け込んできた。
「 おう〜〜 おかあさん お得意のカンテン・ゼリーだよ〜 」
「「 うわ〜〜〜い♪ 」」
「 あ こら〜 お前たち、手を洗ってきなさい。 ほらほら・・・ 」
「 うん。 あれ? おねえさん どうしたの。 」
「 おねえさん〜〜 手、 あらいにゆこうよ〜 」
「 ・・・ え ええ ・・・ 」
子供たちに纏わりつかれつつも 彼女はガンコに窓辺に佇み続けている。
「 おねえさん。 ど〜したの〜 」
「 オヤツ だよ〜〜 おねえさん 」
「 ・・・ あの! 海 が みたい ・・・!!! 」
― かな〜〜り強い調子で 彼女は同じセリフの三回目を口にした。
「「 ????? 」」
「 ・・・・・・・ 」
一瞬 いや 数秒 ・・・ リビングの中は し・・・ん としていた。
「 ・・・ いえ あの ・・・ いいんですの、 わがまま言ってごめんなさい ・・・ 」
薄倖のヒロインは 淋しそう〜〜に言い足し ・・・ 淋しそう〜〜に微笑もうとした が。
「 ― え。 あのキャシーさん ・・・ もしかして近眼ですか。 」
「 ・・・ は あ?? 」
「 うみ なら そ こ。 」
「 うん。 ほら〜〜〜 こっち。 」
子供たちは 薄倖のヒロイン の手を引っ張りリビングのテラスに出て ―
「「 ほら〜〜〜 うみ !!! 」」
テラスの眼下には どど〜〜〜〜ん ・・・・と正真正銘な 海 が広がっていた。
「 ・・・ あ は ・・ はあ ・・・ 」
「 海、行きたいの? じゃあさ〜 オヤツ食べたらいこっか、すばる〜〜 」
「 うん、すぴか。 でも 先にオヤツ〜〜〜♪ 」
「 あったりまえ〜〜 あ! 手、洗ってこなくちゃ! 」
「 うん! あ おねえさんも〜〜 いこ! 手ェ〜〜をあらいましょ〜〜♪ 」
「 え? あ ・・・ あれ 〜〜 」
子供たちは 彼女の手をひっぱりずんずんバスルームにつれていった。
・・・ あ〜〜 助かったよ・・・ ありがとうな〜 すぴか すばる〜〜
しっかし またなんだって 海 なんだ??
ジョーは オヤツのトレイをテーブルに置きつつ首を捻っていた。
ざっぱ〜〜ん ・・・・ しゅわしゅわしゅわしゅわ 〜〜〜・・・・
そろそろ梅雨明けも近い海は 今日も陽気に揺れている。
沖合いにはカモメが数羽 ひらひら飛んでいて いつもながらにの〜んびりとした光景だ。
乾いた砂の上に大小の影がみっつ、伸びている。
「 うみ だよ、 おねえさん。 ほら〜〜 よくみて。 」
「 え ええ ・・・ 」
「 みたい〜って言ってたもんね、 おねえさん。 ほら うみ。 」
「 ・・・ ええ ・・・ あ ちょっと波打ち際に行ってみない? 」
「「 だめ! 」」
「 え? どうして。 」
「 だめ。 こどもだけで うみのちかくに行っちゃ ぜったいにだめ。 」
「 うん だめ。 おやくそくなんだ。 ぜったにだめ。 」
「 海に入るわけじゃないわ。 波打ち際で遊ぶだけだもの、いいでしょう? 」
「「 だ め ! 」」
「 ・・・・・・・ 」
すぴかとすばるは真剣な顔で はっきりと断言した。
え ・・・ なんなの、このコたち・・・
キャシー嬢は少々鼻白み この姉弟をみていた。
ギルモア邸の下には大海原が広がっている。
この付近は湾の途中に突き出た崖下の海で、所謂 <近深>なのだ。
気軽に泳げる海ではない。
子供たちはほんのよちよち歩きのころから 一人で海には近づかない ことを
徹底的に叩き込まれていた。
なにせ 命に関わることなのだ。 ジョーもフランソワーズも非常に厳しく教え、
ちょっとでも <いはん> をすると、時には泣き出すまで叱った。
その甲斐あって すぴかもすばるも決して子供たけでは海には寄ってゆかない。
「 ふうん ・・・それじゃ 二人ともここで待ってて? 」
キャシー嬢は 二つの小さな手を離した。
「 ?? なんで。 」
「 どこ ゆくの。 」
「 私 海、見て来るわ。 ちょっとだけよ、波打ち際で海と遊んでくるわね。 」
「 だめだってば! コドモだけで海にいっちゃ! 」
「 だめだよ〜〜 おねえさん! 」
「 ― 私はコドモじゃないもの。 じゃあね。 」
「「 ・・・・・・・ 」」
オトナのズルさで見事に切り返され コドモたちは ぐ・・・っと詰まってしまった。
すぴかとすばるは ぎゅ・・・っとお口を結んで お姉さん がひらひら海辺に降りて行くのを
眺めていた。
― そして。
「 よ ・・・ いしょっと。 ここら辺でいいか・・・ 」
ジョーは クーラーボックスを ずさ・・・っと砂地に置いた。
「 一応 サービスしとかないと な。 うちのチビ達も咽喉渇いてるだろうし・・・
え〜〜と ??? 何処にいるのかな・・・」
ジョーは 暢気にぐる〜〜っと松林の方まで眺めていたが・・・
「 おと〜〜さ〜〜ん たいへ〜〜〜〜ん !!! 」
「 おとうさん〜〜〜 おねえさんがさ〜〜〜 うみに さ〜〜〜 」
色違いのアタマが必死で砂地を駆け戻ってきた。
「 なんだって?? 」
「「 おねえさんが! あっちにあったふるいボート、のっちゃったんだ〜 」」
「 え!? そ それで ・・・ ボートはどこだ? 」
「「 あっち!! 」」
二人が指差したのは ― かなりの沖合いだ。
「 ・・・ あ ンのォ〜〜〜 お転婆がぁ〜〜 」
「 ダメだよね〜〜 おとうさん? 」
「 い〜けないんだ だよね、お父さん! 」
「 うん、絶対にダメだ。 ようし・・・ ちょっと呼び戻そう。
お前たちはここで ・・・ うん、このクーラーボックスのとこで待っておいで。
あ・・・ 中のジュース、飲んでいいからね。 」
「「 うわい♪ 」」
「 じゃ ちょっと行ってくるな。 お〜〜〜い ・・・!! 」
ジョーが沖に向かって怒鳴りつつ 走り出した時 ・・・
≪ ・・・ ジョー? 急いで!! ≫
愛妻から脳波通信が飛んできた。
≪ ?? え なんだい、フラン? ぼく、今 ≫
≪ わかってるわ <見て> いるから。 ≫
≪ あ そっか・・・ ありがとう 〜〜 さすが〜〜 003♪ ≫
≪ そんなことよりも! 大変よ!
沖の方からモーターボートが!! あのおんぼろ・ボートに突進してるわ! ≫
「 な なんだって?! 」
思わず 大声で反応してしまった。
≪ ・・・ううう〜〜〜〜 今日は下に防護服なんか着てないんだぞ〜〜 ≫
「 !? おい〜〜 冗談じゃないよ 〜〜 ! 勘弁してくれよな〜〜 ! 」
ジョーは。 009 に有るまじき繰言を口の中で言うと ― 海に向かってダッシュした。
Last updated
: 07,10,2012. back / index / next
*********** またまた途中ですが
で また続くのであります。
今更ながらに DVD であのオハナシを見直し・・・
<全員・面かぶりクロール> に爆笑しておりました・・・